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第39回農村文化ゼミナール これからの農村と農業を考える

1 公益財団法人農村文化研究所(遠藤宏三理事長)などが主催する第39回農村文化ゼミナール・第5回置賜未来塾が、8月1日(土)、米沢市にある伝国の杜第会議室で行われ、約70名が参加した。
(写真右=挨拶する遠藤宏三理事長)
 今年のテーマは、「これからの農村と農業ー『時代ト農政』から100年」、と題するもので、100年前に民俗学者柳田國男が『時代ト農政』(1910)で説いた「効率性や国家の利益だけを優先する農政ではなく、地域に根ざした自立して生きる中農の育成策」を現代の課題として受け止め、過疎化、少子高齢化、限界集落の増加、地球規模での気候変動や国際情勢の緊迫化による食料安全保障の危機にある日本の状況を踏まえ、これからの「いのちを育む農」のあり方や地域社会と農業の将来性を考える場を提供するものとなった。
 3はじめに遠藤宏三理事長が、「農村は老人クラブさえも消滅するような状況で、30年余り前とは状況が様変わりした。今回のゼミナールでは3回目となる米の問題をテーマにしたが、地方独特の発展策やいいアイデアが出ればと期待する。この50年、佐野先生がお連れした数千名の学生と農村での交流が行われてきた。農村文化研究所は未来を担う世代との様々な架け橋となっていきたい。」と挨拶した。
 同研究所所長の佐野賢治氏が「民俗学は科学ではないという者がいるが、民俗学は今必要な学問。柳田國男は、地域の農業をよく見ていて、下から農政を見て取り組んだ。昨年米問題が発生したが、上から目線でやっている。民俗学の立場から言えば、米、稲作、家、祖先崇拝が日本人を作ってきた。文化としての業業、未来志向の土に根ざしたものとしてもう一度見直し、命を育む農を考えたい。」と趣旨説明を行った。
2 基調講演には、茨城大学名誉教授の中島紀一氏が「戦後農村80年のいまに」と題して講演した。
(写真左=基調講演を行う中島紀一氏)
 中島氏は、2025年に行われた農業センサスを元に、日本の農業の現状を説明。まずは農家の数が激減し、30年前は135万戸あったものが、80万戸へと55万戸減った。しかも80万戸の半分は80歳前後の世代で、あと5年から10年で、その世代は現役の百姓というのは難しい。問題は自然減ではなく社会減であることを説明した。「農終い」を百姓のかなりの人が考えているが、一方で大規模経営がものすごく伸びている。「農終い」の結果、自分の田畑を預ける人が増え、2%の農家が50%の田畑を所有し、安定性と勢いがあるとした。
 今後の農業の方向として、大規模スマート農業への完全移行は無理であり、中小規模農家や中山間地にも役割があるとし、農や農村にこそ次の時代があると述べた。その際に時代の趨勢の中で、「現実的視点」を持ち、次の時代を考えることが大事だした。
 その具体的な例として、鹿児島県喜界島や高畠町の有機農業をあげ、原理的な農業のあり方を考え、本気で若い人たちに農と言うものをつないでいくことが今必要ではないかと述べた。忘れられた農の世界があり、新しいやり方があるとして、農を未来科学として考え直していく必要性を説いた。
4 シンポジウムでは、置賜自給圏推進機構共同代表の菅野芳秀氏、米沢稔りの会の大木保善氏、株式会社おきたま興農舎の小林和香子氏がそれぞれ自分が経営する農業の現状や取り組み、課題などを報告した。菅野氏は、昨年、国会議事堂前で「令和の百姓一揆」をおこなったことを紹介、社会全体で農業を守っていかねばならないと述べた。大木氏は、上杉鷹山公の志を受け継ぐ上杉籍田米という米ブランドを作り、米沢品質アワードに登録、「あきらめない心が育つ」というキャッチコピーで販売中。小林氏は、農業が軽んじられている理由として、自分たちの農業、農村をどうするのかという議論が足りなかったと述べた。
 最後に、パネル討論がおこなわれた。コメンテーターの黒田三佳氏は、食のグローバル化の見直しを提言、本当にそうなのかというクリティカルシンキング(critical thinking)が大切と指摘、講師の中島氏は、農業は経済活動だが精神性豊かな文化で、農に関わりのない人や農の価値を理解する人を増やしていき、肩を緩めてやれることを拡げていくことが大事だとした。