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【タイトル】
「公立置賜総合病院は、命の最後の砦であり、持続的・継続的な運営を行い、医療ニーズに応えていく責任がある」
令和4年4月1日付で、置賜広域病院企業団(構成団体 長井市、南陽市、川西町、飯豊町及び山形県)の管理者である企業長に就任した渡邊丈洋氏に、抱負などについて聞いた。(インタビューは成澤礼夫・米沢日報デジタル社長)
— 企業長就任おめでとうございます。10年余り前、置賜総合支庁に勤務され、置賜地方のことは勝手知りたるという面もお有りかと思いますが。
渡邊氏 平成23年、置賜総合支庁地域振興課長として赴任した際、企業団の構成団体である2市2町の首長さんは、南陽市長さんが変わりましたが、他の方は当時のままで挨拶回りの際、「よく来てくれた」と歓迎を受けとても嬉しく思いました。
公立置賜総合病院とサテライト医療施設を運営する置賜広域病院企業団は、2市2町と山形県が事務組合を作り、一つの地方自治体として公営企業法という法律の下で運営し、自治体が任命する事業管理者(企業長)を置いて事業を運営しています。
私は山形県庁に入って以来、38年間、主に健康福祉関係の仕事に従事してきましたが、平成12年に、公立置賜総合病院の立ち上げの仕事にも関わったこともあり、今回、企業長を拝命するご縁を頂いたのかなと思っております。
— 置賜広域病院企業団の2代目企業長として、抱負をお聞かせください。
渡邊氏 少子高齢化や人口減少が進む中で、私たちは医療を提供しています。人口減少で患者さんが減ったからと言って、「事業をやめます」とは言えません。病院は社会の重要なインフラであり、地元に医療ニーズがある限り、適切な医療サービスを提供していく必要があります。
公立置賜総合病院には「救命救急センター」もあり、「命の最後の砦」ですので、持続的、継続的な運営を行っていく責任があると考えます。病院運営をしっかりと続けていけるようにしていくのが、私の最大の責任だと理解しています。
— 「心かよう信頼と安心の病院」を病院の理念としてうたっていますが、企業長として、この理念をどう実現していきたいですか。
(写真下=公立置賜総合病院)
渡邊氏 置賜広域病院の理念に、「信頼と安心」をうたっていますが、医療を提供する者として一番大事なことは、やはり「患者本位の医療の展開」だと思います。
患者さんに安心して診療を受けて頂くには、医師や看護師との信頼関係はとても大事で、日々のやり取り、例えば態度、言葉使いが信頼と安心に結び付くと思います。その為には、医療スタッフが自分の技術、知識など、専門性を高め、資格を取ることやチャレンジする気持ちが大事になります。病気を治すには「人が一番の重要なポイント」となります。
— 各地の病院、クリニックなどで、産婦人科、精神科、小児科など、医師確保の困難さや採算の面から、診療科目の閉鎖が発生しています。今後、この分野も含めて医療の質、量、社会的ニーズに応えていくという視点が大事ですね。
渡邊氏 公立置賜総合病院は、置賜地方で「3次救急医療」の役割と同時に、置賜全体の高度医療、急性期医療を担っている病院です。
当病院・サテライト医療施設と、一次医療を担う開業医の先生方と連携して、役割分担をしっかり行いながら、住民の命と健康を守っていかなければならないと思います。
特に、分娩を伴う産婦人科、精神科、小児科などの夜間救急外来があるのは、公立置賜総合病院だけですから、その点からもしっかりと医療を守り責任を果たしていかなければならないと考えております。
— 病院収支の現状はいかがですか。新型コロナによる影響で受診を控える動きも一時ありましたが。
渡邊氏 当病院は、「3次救急医療」の役割を担っているため、医業収支上はどうしても不採算の部分があります。そのため、構成団体の自治体からも負担金をいただき、赤字を穴埋めしながら運営しています。ですから経営は大変です。
ただ令和2年度、同3年度は新型コロナ対応病床の確保を図ったことで、政府からの補助金がありました。令和2年度の経常収支は8億円の黒字で、令和3年度も患者さんが診療に戻ってきましたので、同2年度を上回る黒字が見込まれます。その剰余金を使って、病院の修繕や新しい医療機器の導入、人材教育に対する投資に当てていきたいと考えています。
— 置賜地方の自治体に対しての要望や課題などはありますか。
渡邊氏 基本的に、公立置賜総合病院、サテライト医療施設も含めて、置賜地域の命の最後の砦として、持続的に守っていけるようにしっかりご支援を頂きたいことです。
また現在、米沢市立病院の建替工事が進んでおりますが、米沢市立病院は米沢市を中心とした救急医療の要になっていくと思われます。その際に同じく救急医療を担う公立置賜総合病院との役割や機能分担をどのようにしていくのかも議論されていくのではないかと思います。
公立置賜総合病院と米沢市立病院それぞれが特徴を発揮し、お互いがウィンーウィンの関係で共存できる形に持っていきたいと思います。
— 座右の銘、好きな言葉があればご紹介下さい。
渡邊氏 私は現場に身を置いて、仲間と一緒に仕事に取り組んだり、悩んだり、分かち合っていた方が楽しいと感じる性格です。
「踊る大捜査線」というドラマで、俳優の織田裕二のセリフに「事件は会議室で起こっているのではない。事件は現場で起きているんだ。」というのがあり気に入っています。「指示は適切か、対策は現場にマッチしているか」という視点で、課題解決ができたら良いと思います。
企業長という立場ですが、現場が抱えている問題を私も一緒に知恵を出して、皆さんと共有しながら解決していきたいと考えています。今後とも宜しくお願い申し上げます。
【略歴】昭和37年、村山市楯岡生まれ。昭和59年3月、山形大学人文学部卒業。同年4月、山形県庁入庁。平成23年4月、置賜総合支庁総務企画部地域振興課長、同28年4月、山形県健康福祉部健康福祉企画課長、同30年4月、県立中央病院副院長、令和3年4月、山形県健康福祉部長、同4年4月〜現職。
(2023年1月28日11:45配信)