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竹田 歴史講座

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書評 烏帽子山八幡宮日本一石の大鳥居 名石工吉田善之助

torii-1 南陽市赤湯の烏帽子山八幡宮に建立されている石の鳥居は、明治36年(1903)に建立され、継ぎ目なしのものとしては日本一の大きさを誇ることで知られる。この大鳥居を作った石工吉田善之助に因む冊子とDVDが、令和4年8月30日、烏帽子山八幡宮敬神会(神尾伸一会長)によって発行される。(写真右=大鳥居の歴史や吉田善之助を記す冊子)
 この大鳥居が日本一であることや、石工が宮内町(現在の南陽市宮内)に住んでいた吉田善之助である事は、毎年4月18日に行われる同大鳥居の注連縄掛け替えの度ごとに披露されるが、吉田善之助の全体像に関しては正直言って私はほとんど知らなかった。
 昨年、この大鳥居の下で石片が発見されて大鳥居の笠石からの崩落片ではないかと心配されたが、今年6月13日に行われた東北芸術工科大学文化財保存修復研究センターの石﨑武志氏(客員研究員、理学博士)と地元の歌丸石材店の歌丸慶二氏による実地調査で、破片は別物であることが判明した。ただ大鳥居は築120年を超え、一部が亀裂崩落していることから補修工事が必要との報告がなされた。
 この一件は、別の意味で石工吉田善之助への関心を呼び覚ました。歌丸慶二氏が大鳥居建設時の資料を持っている人がいるという情報を同会にもたらしたからである。その資料は、南陽市宮内に住む遠藤寿郎氏が所有するもので、故錦三郎氏が昭和36年に出版した『石の大鳥居』というガリ版刷りのものである。
torii-2 烏帽子山八幡宮敬神会は、平成22年9月、この文献を元に粟野収吉氏(元南陽市議会議員)が編集し、置賜タイムス社が出版した冊子『名石工 吉田善之助』の復刻と、昭和57年に南陽市八ミリクラブが製作した『ふるさとの名石工 吉田善之助』のDVD化により、これらの資料を後世に残したいと考え、この度小冊子とDVDに再編集・発行するに至った。(写真左=8ミリフィルムからDVD化したもの)

 『名石工 吉田善之助』を読んでみる。吉田善之助は、天保9年(1838)、宮内邑(むら)に生まれ、明治42年(1909)に72歳で死去した。吉田善之助が石工として初めてその名前が登場するのは、安政元年(1854)、16歳の時に現在の高畠町大字竹森大笹生にある慈眼院で黒地蔵を手がけたこと。南陽市内の寺院には、吉田善之助が手がけた山門の門柱などがいくつかある。
 明治に入って、吉田善之助の名前を一躍有名にしたのが、初代山形県令三島通庸の時に、県直轄の請負師となり幾つかのメガネ橋を作ったことだろう。南陽市中川小岩沢にある石橋は今なお使われている。私のふるさと、鶴岡市加茂にある旧加茂トンネル(現在は通行不能)の入口の上の竜と虎の彫刻は、虎が善之助、竜は息子の作である。
 さて、大鳥居は明治36年(1903)に建立され、高さが10.75㍍、笠石の長さが12.7㍍ある。注連縄は重さが約300kgあり、縄の中には番線を入れて強度を高めている。この大鳥居は吉田善之助が65歳から66歳の時に石を刻んだものだが、吉田善之助の石工としての技術力を示すものとなっている。大鳥居の柱石の下部をコンクリートで装飾しているが、これはコンクリートが出始めた時代で、明治好みと言われるものだ。
 この大鳥居の建設費用に関して記している。総費用は1,560円18銭9厘で、当時の白米1俵の値段が6円だったというから、現在の白米1俵の値段を16,000円とすると、現在に換算すると416万円ということになる。今だったらこの建設費では収まらないだろう。
 本書では、なぜこの大鳥居を建てたのかの動機や、どのように建立したかに関しても記載されている。動機に関しては、明治25年、赤湯町北町にあった八幡神社を現在地に遷したことで神社には鳥居が必要だったことや、神社の裏山から良い石を切り出すことができたことなどがあげられている。しかし、大鳥居を建立するには莫大な経費がかかることを考えると、やはり当時の人々の信仰心の大きさがまず第一といえよう。
 DVDビデオは、8ミリ映画をDVDに変換したもので時間は25分あり、南陽市赤湯の位置、石の大鳥居、吉田善之助と残した建造物、石の大鳥居ができるまで、エピローグの5つから構成されている。教育用としてとても利用価値がある。
 この冊子の出版、DVD化は赤湯の歴史の掘り起こしや、今後の大鳥居修復に当たっての大きな原動力となることだろう。その努力を多としたい。(書評 米沢日報デジタル社長 成澤礼夫)

著 名 ・烏帽子山八幡宮 日本一 石の大鳥居 〜名石工 吉田善之助〜
    ・DVD ふるさとの名石工 吉田善之助
編集・発行 烏帽子山八幡宮敬神会(南陽市赤湯1415番地)
      TEL 0238-43-2444(烏帽子山八幡宮内)
発行日 令和4年8月30日
頒布価格 冊子、DVD各々 1,000円(税込) 

(2022年8月26日15:50配信、8月28日11:15最新版)